昭和10年、不知火公 爵(清水紘治)は、自らの演出でマルキ?ド?サドの『悪徳の栄え』を妻の珠江(李星蘭)主演、脇はすべて犯罪者の劇団員でしめた舞臺劇として上演しようとしていた。そして公爵は、劇団員の犯(牧野公昭)に命じて妻を犯させるという舞臺裏の演出をほどこすが……。 サドの原作を劇中劇にして、昭和初期、226事件直前の貴族の退廃をエロティシズム濃厚に描いた実相寺昭雄監(jiān)督ならではの異色作。倒錯と欲望と退廃を徹底的にスタイリッシュな映像美で捉えながら、そこから導(dǎo)き出されていく狂える孤獨(dú)感をも巧みに描出。また昭和初期の東京が舞臺ということもあって、実相寺監(jiān)督の前作『帝都物語』と表裏一體をなす作品としても讃えられている。気品と狂気をあわせ持つ清水紘治の名演も特筆しておきたい。 奇才?実相寺昭雄監(jiān)督が放つサスペンスミステリー。サディズムの語源となったマルキ?...